良いDJが減った理由は、才能ではなく「掘らなくなったこと」だと思う
これ、誰かをディスりたい話じゃない。
ただ、現場に立っているとどうしても見えてしまう「違和感」について、ちゃんと文章にしておきたかった。
スマホ一台でDJが成立する時代になった
今のDJは便利だ。便利すぎる。
月に千円ちょい払えば、世界中の音楽が無限に流れてくる。プレイリストも、自動で提案される。
“それっぽい”音楽は、いくらでも手に入る。
なのに――なぜだろう。
「記憶に残るDJ」の割合は、むしろ減った気がする。
ここでよくある誤解がある。
「才能がないから」「センスがないから」「経験が浅いから」
いや、違う。たぶんそこじゃない。
問題は“選曲の技術”ではなく、“掘ってないこと”
率直に言う。
多くのDJが、曲を探していない。
・人気曲を検索して終わり
・レコメンドに出てきた曲をそのまま使う
・有名DJのミックスを再生して、そこから抜く
・バズった曲を拾って、次のバズを待つ
これで、確かに「成立」はする。
でも、それは“音楽を運んでるだけ”になりやすい。
たとえるなら、コンビニ弁当を温めて出しているだけなのに、料理人の顔をしている感じ。
料理人が悪いんじゃない。時代がそうさせた。けど、違いは出る。
“掘る”って、結局なんなんだよ
「ディグる」って言葉、今は軽い。キャッチーで、便利な言葉になった。
でも本来、掘るってのは、もう少し面倒で、もう少し遅い。
レコードで言えばわかりやすい。
ジャケットの色、プレス国、レーベル、曲順、クレジット、バーコード、盤の硬さ、匂い。
そういう情報の集合体の末に、やっと「買う」が起きる。
そして、その面倒くささの中で、なぜか脳が勝手に学習する。
「この人のベースラインの癖」「この時代のスネアの鳴り」「このレーベルの湿度」みたいなやつを、
自分でも気づかないまま蓄積していく。
掘るって、要するに“自分の耳を鍛えるプロセス”なんだと思う。
「曲を知ってる」と「曲に出会ってきた」は別物
ここが一番デカい差だ。
知ってる曲を並べても、それはただの「カタログ」になりやすい。
でも、出会ってきた曲には「順番」と「背景」が付いてくる。
・なぜその曲を買ったのか
・なぜその曲が手に入らなかったのか
・どの曲の次に見つけたのか
・どの現場で刺さったのか
・どの時間帯に“勝った”のか
こういう履歴が、DJの説得力になる。
フロアって不思議で、曲の知名度よりも、そのDJの“履歴”に反応する瞬間がある。
うまく言えないけど、「この人、聴いてきた人だな」って伝わる。
掘らないDJが増えたのは、努力不足じゃない。構造の問題だ
ここ、優しく言っておく。
今の時代、掘らなくても成立してしまう。成立してしまうから、掘る理由が消える。
そして怖いのは、掘らないままでもそこそこ褒められること。
ちょっとミックスが繋がれば「上手い」。ちょっとトレンドを拾えば「センスある」。
その褒め言葉が、掘る動機を削っていく。
結果として何が起きるか。
“上手いけど、薄い”が量産される。
じゃあ、どうすればいい?答えはシンプル。「自分で面倒を背負う」
必要なのは、根性論じゃない。
仕組みを変えるだけ。
- 週1で「探す日」を固定する(混ぜない。探すだけの日)
- “拾わないルール”を作る(バズ曲・有名DJプレイリスト禁止の日)
- クレジットを見る癖をつける(プロデューサー・エンジニア・レーベル)
- 同系統を3曲じゃなく30曲集めて比較する(脳が学習する)
- 買う/保存する理由を一行メモする(履歴が資産化する)
これだけで、音は変わる。
というか、音が変わるんじゃなくて、自分の中の判断が変わる。
掘ってるDJは、結局「人生」も掘ってる
最後に、少しだけ人生の話をする。
掘るって行為は、音楽の中で起きてるように見えて、実は自分の内側で起きてる。
何に反応するのか。どこで興奮するのか。何を美しいと感じるのか。
それを自分で拾い直す作業。
だから、掘ってるDJは強い。
その人の選曲が、その人の人格になる。
フロアが反応するのは、曲じゃなくて、たぶんその人の蓄積だ。
便利になった時代に、あえて面倒を選ぶ。
これが、いちばん再現性の高い「差の作り方」だと思う。